貧血持ちの人はたくさんいますが、貧血には熱が出たり、身体が痛むというようなハッキリした症状はありません。
自覚症状としては、時々立ちくらみが起きることでしょうか。まったく自覚がなくても健康診断で引っかかる、隠れ貧血の人はさらに大勢います。
何の対処をしなくても、とりあえず普通の日常生活が送れるために、ついそのままにしてしまいがちですが、貧血はれっきとした病気。きちんと治さなくては、健康な身体といえません。
放っておくと、貧血の症状はどんどん悪化することがあります。背後に重い疾患が隠れていて、それが重症化する可能性も否定できません。
症状が軽いうちに、しっかりと対策を取って完治させ、すこやかな健康体を手に入れましょう。
この記事は、生活の中での貧血予防方法、また医師の診察を受ける際の病院の選び方、そして受診時について、自分の体験をもとにまとめています。
- 健康診断の結果をそのまま保管しているだけの人
- 貧血の検査結果が出たけれど、何も対策を取っていない人
- 病院で貧血治療を受けたいと思っている人
こちらの記事は、個人の体験を元にしたものです。内容は執筆者個人の見解によるもので、全ての方への有効性を保証するものではありません。あくまで参考の一つとしてお読みください。
似た症状にお悩みの方も、適切な医療機関での受診・治療をお勧めいたします。
貧血ってどんな病気?
原因と症状
貧血は、名前のイメージから「体内の血液が不足している状態」だと思われがちですが、正しくは
「血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンが減少することで起こるさまざまな症状」
を指しています。
ヘモグロビンの役割は、酸素を運ぶこと。不足すると、
- めまい
- ふらつき
- 立ちくらみ
- 息切れ
- 耳鳴り
- 頭痛
といった症状が起こり、ひどい時には立っていられなくなります。
貧血のチェックリスト
大勢の人が抱える貧血は、特に女性に多く、月経のある女性の20%、つまり5人に1人が貧血持ちといわれています。
はっきりとした自覚がない人でも、知らぬ間にかかっていることがあるため、以下の10項目をチェックしてみましょう。
□ 疲れやすい
□ 少し運動をしただけですぐに息が切れる
□ めまい、たちくらみがよく起きる
□ 集中力がない
□ イライラ、くよくよしがち
□ 夜、眠れない
□ いつも顔色が悪い
□ 爪が弱く、割れやすい
□ 口内炎ができやすい
□ 偏食である
チェックした項目が多い人は要注意です。自覚症状がないだけの「隠れ貧血」かもしれません。
もう一度、健康診断の結果を見直して、日頃の食生活に偏りがないか考えてみましょう。
体内に必要な鉄分はどれくらい?
一般的な貧血には、体内の鉄分の量が大きく関係します。
通常、成人の体内には3~4gの鉄分が存在し、毎日、汗や尿などと一緒に約1mgの鉄が体外に排出されます。
そのため、
- 成人男性・・・約1mg/日
- 成長期(14~16 歳)の少年や成人女性(月経あり)・・・約2mg/日
の鉄分を摂取しなくてはなりません。
妊婦はさらに多量の鉄が必要です。
(鉄分不足が原因ではない貧血もあります。後述します)
女性の半数が鉄分不足
日本鉄バイオサイエンス学会が日本人女性の体内含有鉄分量の調査を行ったところ、貧血のあるなしに関係なく、健康な人と鉄分欠乏の人の割合はほぼ半々という結果になりました。
つまり、2人に1人の女性が鉄分不足の状態なのです。
貧血症状がなくても、体内の鉄分が不足していると、身体にさまざまな不調をきたします。
予防のために、日ごろの食生活を見直して、バランスの取れた栄養摂取を心がけましょう。
男性の貧血には要注意
貧血は女性に多い病気ですが、男性でも貧血持ちの人はいます。
男性は、女性と違って毎月鉄分が失われることはありません。それでいて貧血の症状がある場合には、背後に大腸がんなどの重大な病気が隠れていることがあります。
何もせずに放置していると、気づかぬうちに病状が進んでいる場合があるため、女性以上に深刻な事態になりかねません。注意しましょう。
男性も女性も、大切なのは早めの対策を取ることです。貧血の自覚症状を感じたり、診断結果に出たら、スルーせずにすみやかに医療機関を受診するようにしましょう。
自分でできる予防
貧血は医師の診断を受けるほかに、自分で予防対策を取ることも大切です。
家でできることは、食を通じての予防。
「貧血気味」という軽い症状なら、毎日の食生活を見直すことで改善できるようになります。
偏った食生活も貧血の原因の一つ。なにも対策を取らずにいると、体内の鉄分はどんどん不足して、鉄欠乏性貧血が進んでしまいます。
重症化すればするほど、健康体に戻るまでには根気と手間が時間がかかり、なかなか完治できません。まだ症状が軽いうちに、心がけて鉄分を補給するようにしましょう。
鉄分不足は美容の敵
体内の鉄分が不足すると、貧血になるだけではありません。お肌や髪にもさまざまな影響が出てしまいます。
◇ 肌にシミができやすくなる
紫外線を浴びると、肌にシミができやすくなるのは、体内に活性酸素が発生するのが原因です。
鉄分は、活性酸素を消去する酵素カタラーゼの生成に必要なもの。
つまり鉄分が不足すると、活性酸素を抑えられず、肌にシミができやすくなります。
◇ 目の下にクマ
鉄分が不足すると、血液は体内の随所に酸素を十分に補給できなくなります。
そうすると、寝不足や疲労蓄積、運動不足の時と同じく血行不良が起きます。
目の下の皮膚は顔で一番薄い部分のため、血管が浮き出て血行の悪さが目立ちます。鉄分不足は、目の下にクマができる原因の一つになっています。
◇ 髪の問題
鉄分が不足すると、頭皮の細胞に酸素が行き届かなくなり、髪の成長に影響が出ます。髪のツヤがなくなったり抜け毛が増えたりと、毛髪にダメージが与えられるのです。
酸素だけでなく細胞に届く栄養分も減るため、毛髪が正常に育たなくなってしまいます。
◇ イライラする
脳に送られる酸素の量が減ると、イライラしやすくなります。
そのストレスによって血管が委縮し、ますますイライラが悪化します。
このように、鉄分が不足するとさまざまな問題が生じます。
ちょっと貧血気味という軽い程度でも、鉄分を十分に補給する必要があるのです。
食事からの鉄分摂取
鉄分には、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。
- ヘム鉄を多く含む食品・・・レバーや肉、魚、貝類
- 非ヘム鉄を多く含む食品・・・緑黄色野菜や豆類、海藻、卵など
ヘム鉄の腸での吸収率は約15~20%。非ヘム鉄の吸収率は約2~5%と低いですが、動物性食品のヘム鉄やビタミンCと一緒に摂ることで、吸収率が10%程度にアップします。鉄を多く含む動物性蛋白(肉や魚)をバランスよく十分に取ることが必要です。
食事から1日に必要な鉄分を摂取する場合、体内吸収率が約10%なので、成人男性だと1mgの10倍、つまり10mgの鉄を摂らなければなりません。
さらに成長期(14~16 歳)の男性や月経のある女性は12mg、妊婦は 18mg程度の鉄が必要になります。
鉄分以外の大切な栄養
鉄、たんぱく質、亜鉛をしっかり摂ることが基本的な鉄分補給の方法ですが、レバーや魚ばかり食べていると、栄養の偏りが生じます。
偏食が原因で生じることが多い鉄欠乏性貧血。血液はさまざまな栄養素によって作られており、ほかの栄養素が不足すると、鉄分の吸収率は上がらなくなります。
鉄分を多く含む食品以外にも、バランスのとれた食事を考える必要があります。
- 葉酸を多く含む食品・・・緑黄色野菜やかんきつ類などの果物
- ビタミンB12を多く含む食品・・・肉や魚類、卵、乳製品など動物性食品
血液にとっては、鉄分だけでなくビタミンB群も重要。
野菜や果物を含め、食品の種類を増やすことが大切です。
ヘム鉄と非ヘム鉄、ビタミンCなどをバランスよく摂取するように心がけましょう。
無茶なダイエットはしない
糖質や脂肪分を摂らないダイエットは、即効性があると言われますが、貧血の原因になりえます。
糖質や脂肪のエネルギーが不足すると、人間の身体はその代わりに、たんぱく質をエネルギーにします。
つまり、血液を作るのに重要なたんぱく質がほかに使われてしまうのです。
貧血を防ぐためには、最低限の糖質や脂肪は必要です。
どうしても糖質オフを取り入れたい場合には、1日1食はたんぱく質を含む豆腐などを主食の代わりに食べるのがいいでしょう。
植物性たんぱく質と動物性たんぱく質を組み合わせた食事を摂るようにしましょう。
マスクによる酸欠に注意
目下、新型コロナウイルス感染対策として、外出時にはマスク装着が推奨されています。家を出たら一日中マスクを着けている人も多いでしょう。
今ではマスク必須の日常になりましたが、マスクを長時間装着することで、頭痛・めまいや視力低下・集中力低下といった症状が出る場合があります。
マスクをすると、どうしても呼吸が浅くなるもの。酸欠状態になると体内を流れる血液の量が減り、鉄分も体中に行き渡らなくなります。
そうなると、貧血状態が進むことも十分考えられます。マスクを装着してウイルス対策を心がける一方で、体調を崩すことがないよう、気を付けましょう。